美城常務による「改革」が始まってから1か月余り、
シンデレラプロジェクトを除く多くの部署が解体、所属アイドル達も方針転換を余儀無くされた
そんなアイドル達の一人、城ヶ崎美嘉は独り楽屋で泣いていた
カリスマJKモデル時代に手にした人気、喜び、感動、そして何より信頼できる部署の仲間・・・
それを今の346プロで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすればいいの・・・」美嘉は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、美嘉ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいテーブルの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って髪の手入れをしなきゃ」美嘉は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、美嘉はふと気付いた

「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」
楽屋から飛び出した美嘉が目にしたのは、3階席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに手が振られ、地鳴りのようにコールが響いていた
どういうことか分からずに呆然とする美嘉の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「美嘉さん、出番です！早く行きましょう！」声の方に振り返った美嘉は目を疑った
「う・・・卯月？」 　「何？居眠りでもしてたの？」
「り・・・凛？」 　「本番前に居眠りとは先輩としてなってませんなぁ♪美嘉姉は」
「未央・・・」 　美嘉は半分パニックになりながら他のメンバーを見渡した
川島瑞樹、小日向美穂、日野茜、佐久間まゆ…
暫時、唖然としていた美嘉だったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった
「戻れる・・・あの頃に戻れるんだ！」
出番を終えたメンバーに見送られ、ステージへ全力疾走する美嘉、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ステージ上で冷たくなっている美嘉が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った